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超低温走査トンネル顕微/分光装置の開発

 走査トンネル顕微鏡(STM)は超伝導や2次元電子系などの低温電子物性の研究分野においても,物質表面の電子状態を高い位置分解能とエネルギー分解能のもとで観測できる新しい実験手段として近年広く用いられています(原理はこちら)。ここでは特に走査トンネル分光法(STS)とよばれる測定法が威力を発揮します。STS では探針を試料表面上1ナノメートル程度の高さに保ち,バイアス電圧(V)の関数として微分トンネルコンダクタンス(dI/dV)を測定することで表面の電子状態密度を調べることができ,さらに探針を走査しながら dI/dV 測定することで原子スケールの位置分解能で電子状態密度のマッピングを行うこともできます。

 我々の研究室では超低温(20 mK)高磁場(6 T)超高真空(< 1×10-8 Pa)の複合極限環境下で作動する世界最高性能の超低温 STM(ULT-STM)の開発に2003年6月成功しました(以下の写真)。

STM_1     STM_all

 この装置のユニークな点は,超高真空(UHV)中で準備した試料を大気にさらすことなくSTM 観測室にそのまま搬入することができ,その後3時間という短時間で最低温度まで冷却できることです。これによって超伝導転移温度(Tc)の低い異方的超伝導体や半導体表面に形成される低次元電子系などあらゆる伝導試料の電子状態を 20 mK・6T・UHV という複合極限環境下で 1meV 以下のエネルギー分解能のもとで観測できるようになりました。現在 100mK 以下の超低温度で原子分解能をもって作動する ULT-STM は世界で米国に1台,スペインに1台稼動していますが,清浄試料表面を UHV 中でアルゴン・イオンスパッタ,通電加熱,劈開,低温電子線回折など表面科学の手法で準備・評価してそのまま STM/STS 観測できる装置は我々のものだけです。この ULT-STM は現在以下のような研究に用いられています。

 ・グラファイトのランダウ量子化と量子ホール効果の実空間観測

 ・グラファイト端の電子状態

 ・半導体量子ドット

 ・異方的超伝導体

○ 参考記事 ○

福山 寛, パリティ20, 29 (2005年1月号, 丸善).
神原 浩, 松井朋裕, 福山 寛, 固体物理41, 99 (2006).
H. Kambara, T. Matsui, Y. Niimi and H. Fukuyama, Rev. Sci. Instrum. 78, 073703 (2007)

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