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異方的超伝導(異方的BCS状態)

  物質の中にはある温度以下に冷却すると,抵抗なく電流が流れる超伝導状態に相転移するものがあります。そのミクロな機構である BCS 理論を大まかに述べると,フェルミ粒子である2つの電子間に何らかの引力が働くと低温で2個の電子が何らかの理由で対(クーパー対とよばれる)を形成し,実効的な複合ボース粒子となってボース・アインシュタイン凝縮を起こして超流動状態になると説明できます。通常の金属の超伝導では,引力相互作用が最も有効に働くようクーパー対の波動関数の空間部分は対称的になります。このときパウリの排他律の結果,スピン部分の波動関数は反対称(2つのスピンが逆向きのスピン1重項状態)となります。このような状態は等方的(または s 波スピン1重項状態)超伝導と呼ばれ,超伝導を特徴づけるエネルギーギャップは空間的に等方的に開きます。このような超伝導相をスピン1重項状態と呼びます。

 実はクーパー対はスピン1重項だけでなく,スピン3重項という状態も存在し得ます。超流動 3He はその最初の例でした。その後,重い電子系の UPt3 や銅酸化物高温超伝導体と同じ構造をもつ Sr2RuO4 ではスピン3重項超伝導が実現していることが分かってきました。これらは, p 波または f 波の対称性をもつと考えられ,エネルギーギャップは空間的に異方的に開くので,異方的(または非 s 波)超伝導体とよばれます。高温超伝導体も d 波スピン1重項の異方的超伝導体です。

 スピン3重項超伝導体には,スピン自由度があるため,複数の超伝導相が実現するなど,より豊富な物理が内在します。実際,超流動 3He では温度・圧力・磁場の関係として3つの異なる超流動相が見つかっています。一般にスピン3重項超伝導は転移温度が約1 K 程度と低いため,その実験的研究には超低温に冷却できる装置が必要です。

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