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NMR測定

 「NMR」は「核磁気共鳴( Nuclear Magnetic Resonance )」の略語です。静磁場中におかれた原子核スピンは、ゼーマン分裂した準位間のエネルギー差に等しいエネルギーをもつ電磁波を共鳴的に吸収したり放出したりします。この電磁波の角周波数 ω (多くはラジオ波帯)を静磁場の大きさ で割った値は磁気回転比 γ と呼ばれ、原子核の種類に固有の定数です。すなわち

γ = γH(1)

が成り立ち、たとえば 3He では γ = 34 MHz/T です。

 以上は、原子が真空中に1個おかれたときの話で、実際には物質中でそれぞれの核スピンが感じる磁場は、周囲の環境や隣接核スピン同士の相互作用を有効的な磁場と見立てた内部場の分だけ、外部から印可した磁場とは異なります。したがって、この内部場の変化を共鳴周波数の変化として観測することで、物質の性質の変化(例えば相転移など)を調べることができます。

 また、共鳴吸収する電磁波の強度は各ゼーマン準位の占有数の差すなわち磁化の大きさに比例するので、 NMR は物質の核磁化の測定にも有効な手段です。電磁誘導や磁気天秤タイプの磁化測定法と違って、試料内の電子や他種原子核の磁化や試料ホルダーなど不要な磁化が観測にかからないのも優れた点です。

 この他、電磁波を共鳴吸収してエネルギーの高いゼーマン準位に励起された核スピンがもとの準位に戻るときの時定数 T1 (スピン-格子緩和時間)や、静磁場と垂直な面内で歳差運動するスピンの位相がずれる時定数 T2 (スピン-スピン緩和時間)などの緩和時間も、注目する原子の運動状態に関してミクロな情報を与えてくれます。

 以上のように、 NMR は物質の性質を調べる上で強力な実験手段であり、超伝導体や磁性体などの研究にも広く使われています。しかし、液体・固体 3He 研究における NMR 実験は、超流動や磁性の担い手たるフェルミ粒子(この場合は 3He )そのもののスピン状態を直接検出できるという意味で、特段の強みをもっています。一方、通常の物質に対する NMR 測定では、対象となる原子核スピンは結晶格子に埋め込まれたプローブであって、相互作用を通じてそれを取り巻く電子の振る舞いやイオン配置などの情報を得ています。ですから例えば、超流動あるいは超伝導相のクーパー対のスピン状態が1重項か3重項かを知りたいときに、液体 3He ではクーパー対のスピン帯磁率を直接測定できるのに対し、超伝導体では伝導電子と核スピンとの相互作用で決まるナイトシフトと呼ばれる共鳴周波数変化を通じて間接的な情報を得ることになります。

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