Fukuyama Laboratory - Low Temperature Physics

福島第一原発での燃料棒の“冷却”について(用語解説)

東京大学大学院理学系研究科教授
東京大学低温センター長
福山 寛

3月11日に東北地方と関東地方北東部を襲った巨大地震と大津波によって、あまりにも多くの方々の尊い命が奪われました。ご家族、関係者の方々へ心底よりお悔やみ申し上げるとともに、行方不明の方々の一刻も早い救助をお祈りします。また、不自由な避難生活を送られている方々の心身のご健康が保たれるよう念じております。

(注1)エンタルピー
熱力学状態量の一つで、物質が他系とやり取りした熱量や仕事量を表すときに用いる。例えば、一定圧力下では、液体が高温の物質と触れて蒸発し、より高い温度の蒸気になるときに、その物質から奪う熱の総量と等しい。このとき、エンタルピーは蒸発時に奪う「潜熱」と昇温時に奪う「顕熱」の和となる。潜熱と沸点はほぼ比例関係にあるが、これは、高密度の液体状態から原子・分子が互いの引力を振り切って気体として蒸発する時に必要な熱エネルギーが潜熱に相当するからである。一方、顕熱は液体の種類にはあまり依らず、それが単原子(He:ヘリウムなど)からできているのか、2原子分子(N2:窒素など)か3原子分子(H2O:水など)か、といった構成粒子の内部構造で決まる。一般に、内部構造が複雑になるほど顕熱は数倍程度大きくなる。
(注2)絶対温度
セ氏温度と目盛りの間隔は同じなので1Kの温度差は1°Cの温度差と等しいが、目盛りの原点(ゼロ点)の温度が異なる。セ氏温度では水の凝固点を原点(0°C)としているのに対し、絶対温度では世の中にこれ以上低い温度はないという「絶対零度」が原点(0K)である。絶対零度をセ氏温度で表すと、-273.15°Cとなる。物理現象を扱う際、温度は絶対温度目盛で表す。
(注3)極低温の保持
低温液体の潜熱は非常に小さいので、これを使って実現する極低温環境の実験を長時間続けるには、室温の世界からの熱流入量を非常に小さくする工夫が不可欠である。
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